家に欲しい絵本④ ~おまえうまそうだな~



kurumaがお届けします「家に欲しい絵本」の第4回目は「ティラノサウルスシリーズ」から2冊をご紹介させて頂きます。

★おまえうまそうだな
★ぼくにもそのあいをください


作者は「宮西 達也」さん。
発行所は「ポプラ社」です。

ストーリー

昔、昔の大昔。

恐竜の中で、一番力が強く、凶暴で、みんなから恐れられている恐竜がいました。

その名は、暴君トカゲ、「ティラノサウルス」と呼ばれていました。

そう、表紙に大きく描かれている、いかにも凶暴そうな彼こそが、このシリーズの主人公である、ティラノサウルスです。

そんな凶暴そうな彼の、2つのお話しです。

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★おまえうまそうだな

ある晴れた日に、山が噴火し、地震がグラグラ。そんな中、卵が割れて、アンキロサウルスの赤ちゃんが産まれました。

しかし、まわりには誰もいません。赤ちゃんは寂しくて泣きました。そして、泣きながら歩いていると、頭上から大きな影が、、、

「ひひひひ……おまえ うまそうだな」ティラノサウルスです。ティラノサウルスが、よだれを流しながら、とびかかろうとしたその時!

「おとうさーん!」アンキロサウルスの赤ちゃんは、ティラノサウルスにしがみつきました。

ティラノサウルスはびっくりして、思わず、「なんで、おれさまが お、お父さんだって分かったんだ?」と、言ってしまいました。

アンキロサウルスの赤ちゃんは、答えます。「だって ぼくの、、、!」

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アンキロサウルスの赤ちゃんは、なぜ、ティラノサウルスをお父さんだと思ったのでしょう?そして、うまそうなアンキロサウルスの赤ちゃんを、食べようとしていたティラノサウルスは、どうする??

肉食恐竜である大きなティラノサウルスと、草食恐竜である小さなアンキロサウルスの赤ちゃん。全く違うふたりは、どんな関係になっていくのでしょうか?最後まで目が離せない展開が!?



★ぼくにもそのあいをください

ティラノサウルスは、この世の中は、力があるものが勝ち。力の強いものが一番だと思っていました。

「力こそが大事なもの。強いことが大切なんだ」というティラノサウルスに、だれも「ちがう!」と言い返せません。

それどころか、ティラノサウルスを見ただけで、逃げ出し、声を聞いただけで、震えながら隠れました。

いつしかみんなも、「この世の中は、力があるものが勝ち。力の強いものが一番」と、思うようになっていきました。

そして月日は流れて。。。

ティラノサウルスも歳を取り、力が無くなりました。マシアカサウルスにも馬鹿にされ、しっぽをかみつかれ、、、もう、ティラノサウルスを怖がるものもいません。

ティラノサウルスは誰もいない所に行こうと、旅に出ました。しかし、疲れ果て「これからどうしたらいいんだ……」そうつぶやき、眠りに落ちます。

「おじさん、おじさん」誰かの声でティラノサウルスは、目を覚まします。すると、目の前には美味しそうなトリケラトプスの子供がいました。ティラノサウルスは大きな口をあけて、トリケラトプスの子を食べようとしましたが、「いててて……」マシアカサウルスにかみつかれたしっぽが痛くて、起き上がれません。

「おじさん、しっぽが真っ赤に腫れているよ。大丈夫?」と、トリケラトプスの子は言いながら。。。

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トリケラトプスの子供を食べたい、年老いて傷ついたティラノサウルスと、ティラノサウルスを見たことが無い、小さくてやさしいトリケラトプスの子供。みんなが、「この世の中は、力があるものが勝ち。力の強いものが一番」と思っているなかでの出会いでした。

さて、トリケラトプスの子供は、ティラノサウルスに食べられてしまうのでしょうか?そして、ティラノサウルスはこのまま弱り果ててしまうのか??果たして!?

見どころ・読みどころ

大人気の「ティラノサウルスシリーズ」。この絵本を見たこと・読んだことが無いかたからすると、とにかくインパクトのある絵に驚かれるのではないでしょうか?表紙の絵をご覧頂けば、一目瞭然。特に主人公のティラノサウルスは、大胆で力強いタッチで、描かれております。恐竜好きで、ちょっとやんちゃな男の子が好みそうな絵本の雰囲気がありますよね。

そして、もしかしたら、この表紙を見ただけで、ちょっと苦手な絵本かもしれないと、感じてしまうママさんや、女の子のお子様もいらっしゃるかもしれません。が、それは非常にもったいないことなのです。

よく見て下さい。

「おまえうまそうだな」では、ティラノサウルスの足元に小さな恐竜の赤ちゃん(アンキロサウルス)が。「ぼくにもそのあいをください」には、ティラノサウルスのすぐ近くに子供の恐竜(トリケラトプス)が、可愛く描かれていますよね?この絵本を読み進めて行くと、間違いなく、この子達が、どんどんと可愛くなって行きます。そして、その頃にはきっと、ティラノサウルスのことも。。。

そして、このティラノサウルスシリーズの一番の良さは、「大胆で力強いタッチの絵」と対象的な、「繊細で優しい内容のお話し」であります。そう、このシリーズは様々な愛情や友情を描く、感動の物語なのです。あまり詳細に語ってしまいますと、ネタバレしてしまいますから、ぼやかしておりますが、男の子はもちろんのこと、女の子にも、おすすめ出来る内容となっております。もしかしたら、子供よりも大人の方が、心に残る一冊になるかもしれません。そんな魅力的なシリーズです。

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「おまえうまそうだな」は、シリーズの第1作目になります。いかがでしょうか?このタイトル。表紙の絵のインパクトと相まって、かなり物騒といえますよね。しかし、この作品も愛情たっぷりなお話しです。

このお話しで、ティラノサウルスの相手役を務めるのは、アンキロサウルスの赤ちゃんです。ちなみに、アンキロサウルスは草食恐竜ですが、じつは大人になるとかなり大きく、強そうな姿をしております。「鎧竜(よろいりゅう)」と呼ばれる種類で、硬い鎧の様な皮膚(しかもトゲトゲあり)でおおわれているために防御力が高く、シッポも強力な武器であったと考えられております。しかしながら、子供の頃(幼体)は、その鎧の部分が硬く無かったようで、大人になるまで、どの様にして身を守っていたのか謎とされるほど、弱かったようです。

つまり、アンキロサウルスの赤ちゃんは、肉食恐竜のティラノサウルスにとって、まさに「うまそう」に違いないのです。そして、アンキロサウルスの赤ちゃんの好きな食べ物は草。そして、物語の中に、赤い実が出てくるのですが、これは二人にとって、どんな食べ物に位置付けられるのでしょうか?

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「ぼくにもそのあいをください」は、シリーズの5作目になります。タイトルは打って変わって、優し気な雰囲気ですよね?当然、愛情たっぷりのお話しです。

こちらの相手役は、トリケラトプスの子供です。ティラノサウルスは肉食恐竜の代表各ですが、草食恐竜のなかでの代表的な恐竜がトリケラトプスですね。3本の角が特徴的で、名前の意味も「3本の角を持つ顔」という意味になります。非常に人気で有名な恐竜同士で、他の絵本や、子供向けの恐竜関連の書籍などでは、ライバル同士の設定が多いのですが、この絵本の中では、全く違う魅力で表現されております。

トリケラトプスは群れを作って生活するタイプの恐竜であったと考えられており、大人になれば体も大きく、何よりその強そうな角で身を守っていたと思われます。しかしながら、やはり草食恐竜ですので、常に肉食恐竜には、狙われていたと思われ、特に子供の頃は、危険がいっぱいの暮らしだったことでしょう。

弱肉強食という言葉がそのまま当てはまりそうな、「この世の中は、力があるものが勝ち。力の強いものが一番」という冒頭の雰囲気からは、「ぼくにもそのあいをください」という言葉は中々、結びつきませんね。さて、どんな出来事がティラノサウルスとトリケラトプスに待ち受けているのでしょうか?「あい」とは?そして、こちらにも赤い実が??

作者について

作者の「宮西 達也」さんは、今回の「ティラノサウルスシリーズ」以外にも多くの絵本を出されております。特に「おとうさんはウルトラマン」シリーズや、「おっぱい」などが有名です。

そして、今回ご紹介したティラノサウルスシリーズは、何と15作品もある超人気シリーズです。それでは、タイトルをご紹介してみます。(タイトルから、「絵本ナビ」にリンクしてあります。)


おまえ うまそうだな
おれはティラノサウルスだ
きみはほんとうにステキだね
あなたをずっとずっとあいしてる
ぼくにもそのあいをください
わたしはあなたをあいしています
あいしてくれてありがとう
であえてほんとうによかった
いちばんあいされてるのはぼく
わたししんじてるの
あいすることあいされること
やさしさとおもいやり
ずっとずっといっしょだよ
ヒヒヒヒヒ うまそう
キラキラッとほしがかがやきました


以上、15作品のタイトルをご覧頂きました。怖そうな(?)タイトルも一部ありますが、多くはやさしい言葉が並んでいます。そして、むずかしい言葉は無いのですが、なかなか普段は「口にしない」「口に出来ない」ような言葉がずらりですよね。そして、このやさしい言葉達が、あのインパクトのある絵と共に、絵本となることで、独自の世界観と説得力を発揮されています。

そして、宮西達也さんの絵本の特徴として、子供にとってはもちろんですが、もしかしたら、それ以上にパパさん・ママさんの「心に残る」「心に刺さる」と思われる内容やシーンが多く感じられます。これは、宮西達也さんという私達の先輩パパさんからのメッセージではないでしょうか?

絵本作家としてのみならず、育児に関するエッセイ・コラム・対談・講演会などでもご活躍されており、先輩パパさんとしても、非常に魅力的なかたであります。

まとめ

「家に欲しい絵本」と題してお送りしております、絵本のご紹介、第4回目。「ティラノサウルスシリーズ」いかがだったでしょうか?

ティラノサウルスシリーズは、基本的に読み切りのお話しですので、どのお話しから読み始めても、楽しめるようになっています。そして、今回ご紹介しきれなかったお話しには、「スティラコサウルス」「プテラノドン」「マイアサウラ」など、色々な恐竜が登場します。ぜひ、お気に入りの恐竜のお話しを読んでみたり、今まで知らなかった恐竜を好きになったりしてみて下さい。

さて、最後に、ティラノサウルスシリーズの魅力をもう一つだけ。

「夜のシーン」が素敵です。

ここまでお読み頂きありがとうございました。
次回も、ガラッと絵の雰囲気が違う絵本を、ご紹介してみようと思います。
以上、kurumaがお伝えしました。

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